今もタカの携帯は、頻繁に着信を告げている。


この車だって道明さんが用意した盗品だということは薄々はわかっているけれど、でも本当にもう少しなのだ。



「ねぇ。」


「ん?」


「年が明けたら、温泉に行こう。」


「そうだな。」


「雪が降ってる中で、露天風呂に浸かって、ビール飲んで。」


もちろん混浴だろ?


なんて言ってタカは、夢を膨らませるあたしを笑う。


それはあたし達が交わした約束。


決して叶うことはなかった未来には、まだ残念ながら気付けなかったけれど。



「あ、そうだ。
春になったらどこ行きたいかも考えとけよ。」


「え?」


「卒業祝い、してほしくねぇの?」


タカの言葉に胸が躍った。



「じゃあ、海外!」


「馬鹿か。」


一蹴されて、また笑う。


胸元では揃いのリングが揺れていた。