とにかく着替えたいから、と言った彼の後ろを続くと、2階の一室へと案内された。


タカが暮らす場所。


もっと暗くて冷たそうなイメージだったけど、でも普通だったことに驚いた。



「ねぇ、あたしに家とか教えちゃっても良いの?」


「だってツツモタセの共犯だろ、俺ら。」


あぁ、そうだった。


だから可笑しくて笑ってしまい、中へと足を踏み入れた。


ファミリータイプらしき部屋は、男のひとり暮らしといった感じで、雑然としている。


タカは血で汚れた服を脱ぎ捨て、ゴミ箱に投げた。



「俺、シャワー浴びてくるから。」


引き締まった、でも細すぎる背中。


何だか見ていると悲しくなってきて、途端に取り留めのない感情に支配される。


タカが生活をしている場所なのに、なのに当の彼の存在は儚いもののように見えてくるから。



「ねぇ、冷蔵庫とか漁っちゃって良い?」


「良いけど、ビールくらいしかねぇぞ?」


開けると本当に、ビールの缶だけが並べられていた。


ため息混じりにそれを取り出すと、タカはお風呂場に向かうので、あたしは手に持ったそれのプルタブを開ける。


缶ビール片手にソファーに腰を降ろし、煙草を咥えて携帯を取り出した。




【カレシが浮気してた!】

【暇な日いつ?】

【愛してるよ。】



くだらないメールばかりだ。


一気に冷めていく熱を取り戻したくて流し込んだビールは、嫌に苦かった。