トカレフ――拳銃の密輸のことか。



「組の連中もピリピリしてるし、ポリ公も何かしら嗅ぎ回ってる様子だからな。」


「………」


「こんな場所だし、何があるとも限らねぇ。
ないとは思うけど、こっちのゴタに巻き込まれる可能性だってあるんだから。」


それほどまでにヤバイ事案なのだということは、想像に易い。


ぞっとする。



「ねぇ、それホントに大丈夫なの?」


例えば平成13年の銃器発砲件数は215件、一般市民が巻き込まれたという話だってニュースで観た。


けれど道明さんは、



「安心しろよ、タカは一切この件には関わってねぇから。」


そういうことを言っているんじゃないのに。


なのに彼はため息混じりに煙草を咥え、



「まぁ、そういうことだし、早く帰れよな。
どのみちここで変な野郎にナンパされても困るだろ?」


「…うん。」


「タカにもさっさと帰れって俺から連絡入れといてやっからさ、お前ら家でセックスでもして遊んでろよ。」


何だそれ。


けれど最後はいつもの道明さんらしくて、少し安心したのかもしれない。


先ほど見たことは忘れようと努め、送ると言われた言葉を断り、街を後にした。


とにかくシロが待つあの部屋に帰れば、全てが別世界のことだと言い聞かせられるから。


だってあたしなんかの頭じゃまだ、何もかもを現実のこととして受け入れられるほどの許容量なんてない。