タカはそう言って、本当にちょっとだけ笑って見せた。


辛いのか、悲しいのか、苦しいのか、虚しいのか、とにかくそんな感情全てがこの静かすぎる部屋を包む。


今、彼の中には何が残されてるのだろう。



「昨日、誕生日だったんでしょ?」


「………」


「ねぇ、お祝いしようよ。」


「え?」


「生まれた日だからどうこうじゃなくて、今年も生きてたぞー、って意味で。」


あたしの素っ頓狂な提案に、彼は一瞬驚いた後で、ふっと笑う。



「それ、もちろん道明くんは抜きだろ?」


「当然でしょー。」


「じゃあ、たまにはふたりでどっか行くか。」


「行きたい、行きたい!」


じゃれ合うように抱き付き、タカのぬくもりを噛み締めた。


もう、この人の傍にいられるだけで良い。



「なぁ、それより前に、腹減らねぇの?」


「あっ、あたしシロにご飯あげてない!」


ぱっと体を離すと、タカは少し困った顔でまた笑う。


大丈夫、例え何があったって、あたし達は互いさえいれば、壊れたりなんてしないから。


ドアを開けると、待ち構えていたとばかりに甘えた鳴き声でシロが、すり寄ってきた。


あたしも、タカも、シロも、捨てられた子供だけど、それでも生きているんだよ。