「とにかく、二度とあんな危ないことしないでね!」


と、前置きをした上で、



「それで、何か用?」


「別に用なんかねぇけど。
暇だったし、そしたらお前のこと思い出したから。」


そんな理由で、ついでとばかりにツツモタセの共犯にまでさせられたのか。


どうして居場所を知っているのか、なんてことを聞こうとは思わない。


静かすぎる路地裏には、独特のひんやりとした空気が漂っていて、タカの香りが一層強く感じられた気がした。



「それよりお前、制服着てるとこの前と感じ違うな。」


「…褒め言葉で言ってる?」


「そりゃあね。」


目を細め、タカはあたしの首筋をなぞった。


途端に呼吸することも忘れ、その指先の動きひとつに意識が集められてしまう。


そこで初めて、彼の衣服に薄っすらと赤い何かがこびり付いていることに気が付いた。


血だとわかった。



「これ、何?」


さっきの男のものじゃない。



「ねぇ、怪我でもしてるの?」


あぁ、と言ったタカは、何でもねぇよ、と付け加え、バツが悪そうに体を離す。


だからもう一度よく見ると、それは彼の体から滲んでいるものではなかった。


途端に思い出すのは、出会ったあの日のこと。


この人のものじゃない血は、誰かを傷つけてついたもの。