夏休みも残り2週間余りとなった、ある深夜3時を過ぎた頃。


ベッドで眠りについていたあたしは、リビングからの話し声によって目を覚ました。


まだ曖昧な思考のままにそれに耳を傾けると、どうやらタカと道明さんが口論をしているらしい。



「タカ、もうやめろって言ってんだろ!」


「うるせぇよ、アンタには関係ねぇだろうが!」


「けど、復讐したって過去が変わるわけじゃねぇんだ!
第一、それを知ったリサちゃんがどう思うか考えろよ!」


端々で聞く“復讐”という単語。


小刻みに震える手でシーツを握りながらも、耳を塞ぐことすら出来ない。



「俺は姉ちゃんが死んでから、このためだけに生きてきたんだ!
アンタだってそれわかってんだろ!」


「………」


「ホントにあと少しなんだ!」


声を荒げたタカに対し、道明さんは、



「あんなことしたって何の意味もねぇだろ!
ふざけんなよ、それでアイが本当に喜ぶとでも思ってんのか!」


「じゃあどうすりゃ良いんだよ!」


タカは誰に、何をするというのだろう。


復讐のために生きてきたと言った意味は?



「頼むよ、道明くん。」


彼は急に絞るような声に変わる。



「これが終わったら俺、ちゃんと足洗うから。」