だから気付けば吐露するように言葉にしていたのかもしれないけれど。



「あたし、何もないの。
夢も、目標も、やりたいことですらわかんない。」


「………」


「だからアンタがちょっと羨ましいよ。」


人の目に怯える春樹も、小さな頃は逞しい弟だった。


だから今はどこかその頃の面影が見える気がして、あたしだけが成長しきれないでいるままだ。



「それってやっぱ、姉貴の将来とかを奪った俺の所為でもあるもんな。」


「関係ないよ、そんなことは。
あたしは結局昔から、誰かに手を引いてもらわないと何も出来ないの。」


「………」


「馬鹿でしょ、あたし。」


笑ったのに、春樹が沈黙するから、空しくなる。


この5年、会話さえ捨ててしまったあたし達だから、今更ろくに互いを励まし合うことすら出来ない。


次第に街は、西日の色に染まっていく。



「俺らってさぁ、一生こうやって過去に囚われるのかなぁ。」


呟かれた言葉は喧騒に消えるが、あたしの心に取り残される。


それは、足掻くほどに波にさらわれ、溺れてしまうかのようだ。


元を正せばあたし達は何も悪いことなんてしていないのに、なのに、どうして――



「どうして木下は死んじまったんだろう。」


顔を覆ってしまった春樹を、あたしは直視なんて出来なかった。


ただ悲しくて堪らない。