「道明くん、いたんだ?」


あたしの後ろから、タカまで顔を覗かせた。



「お前ねぇ、パニクって俺に電話してきといて、おまけに買い出しまで行かせといて、よく言えたもんだなぁ。」


「うっせぇよ。」


と、口を尖らせる彼に反し、



「リサちゃん、もう平気?
これ適当に栄養あるもんとか買ってきたから、食える時に食って。」


道明さんはあたしに買い物袋を手渡してくれた。


何だか全然関係のないこの人にまで迷惑を掛けてしまったことが、本当に申し訳なく思ってしまう。


彼は今度はタカを見て、



「しっかし、復讐なんか似合わねぇ、ってか?」


「…聞いてたのかよ、悪趣味だな。」


「まぁ、俺から言わせりゃ、それってタカなんかが言って良い台詞じゃねぇけどよ。」


どういう意味?


と、思ったけれど、相変わらず聞けるような雰囲気ではなかった。


途端にタカは悔しそうに拳を作って顔を俯かせる。



「なぁ、タカ。
お前の方こそいい加減、過去に縛られずに未来を見ろ。」


「………」


「アイだって、そんなこと望んでねぇってわかってるだろ?」


言って、時計を見た道明さんは、そろそろ行かなきゃ、と部屋を出た。


タカはやっぱり泣きそうな顔をしている。


この人の心の闇を、あたしはまだ知らずにいた。