「ごめんね、タカに迷惑掛けるつもりなんてなかったのに。」


「そんなん思ってねぇよ、馬鹿。」


もう何度、あたしはこの人の存在に救われているだろう。


タカの香りに包まれているだけで、胸のつかえが取れる気がする。



「つか、頼むからあんま心配させんなって。」


「………」


「辛い時はちゃんと俺に言えよ。」


あたしよりももっと辛そうな顔で言って、タカは抱き締める腕に力を込めた。


ねぇ、あなたの抱えているものは、何?


聞きたくて、けれど聞けなくて、顔を上げると唇が触れた。


あたしはこの人のために、何か出来ているだろうか。



「復讐なんて、お前には似合わねぇから。」


タカは言った。


その言葉に、その瞳に、固く誓った決意さえも揺るがされる。


もういい加減、あたしは春樹を許してあげるべきなのかもしれない、と。


けれど言葉が持てず、目を逸らした時、ドアの向こうからふにゃあとか細いシロの鳴き声が響いた。


寝室の扉を開けると、リビングのソファーで道明さんが煙草の煙を吹かしていたことには驚かされたけど。



「よう、リサちゃん。」


タカと道明さんは、あの喧嘩をした次の日にはもう、仲直りをしたのか一緒にいたことは知ってる。


けど、でも、どうして今ここに?