テストは午前中で終わり、普通なら他の生徒はそのまま帰宅するのだが、あたし達は教室に残り、提出物を片付ける梢を待っていた。


だってせめてこれくらいしなきゃ、冗談じゃなく単位不足で留年させられてしまうから。


それから小一時間。



「あー、やっと終わった!」


「んじゃあ、早くこれ提出して帰ろうよ。」


やれやれと3人、荷物を持ち上げた時、



「おっ、お前らまだいたんだ?」


教室のドアから顔を覗かせたのは、直人だった。


そして彼はそれが当然のように、中へと入ってくる。



「直人こそ、こんな時間まで何やってたの?」


「俺は部活のミーティングがあって。」


乃愛の問いに答えながら、彼はあたし達の前までやってきた。



「それより梢、おばさん心配してたぞ。」


「うっさいよ。」


「ったく、口悪いなぁ。」


と、言った直人は、



「梢、これからちょっと話せる?」


「……え?」


「良いから、良いからー。」


直人がなだめるようにして梢の手を引こうとした瞬間、彼女はびくりと肩を上げた。


と、同時に、ぱしっと乾いた音と共に、彼の手が振り払われる。



「触らないで!」