それから一週間、梢は学校を休んだ。


けれどあたしと乃愛は、毎日のように結香さんの家にお邪魔させてもらい、梢を囲んでくだらない話に興じた。


呆然と日々を過ごしていた彼女の顔にも、次第に笑みが戻ってくれたことだけは幸いなのかもしれないが。


人は前に進むためには、時には空元気でも、笑うことは必要だから。


そしてテスト開始日でもある月曜日、梢は少し無理をしながらも学校にやってきた。



「もう大丈夫だよ。」


本心なのかはわからない。


けれど、あたしも乃愛も、梢のその言葉に強く頷いた。


あたし達3人は、こんなことになってやっと、本当の意味での“友達”になれたのかもしれないね。



「昨日、一週間ぶりに家に帰ったら、疲れた顔したお母さんに泣かれちゃって。
連絡ひとつ寄こさないで、毎日眠れないくらい心配してたんだから、って。」


「………」


「今まで、家族なんて大嫌いだと思ってたけど、あたしが勝手に壁を作ってただけなのかも、ってその時気付いたの。」


それはきっと、どん底から見た梢なりの希望の光。



「だから、リサも乃愛もありがとね。」


やっぱり乃愛は肩を震わせていた。


結局、大して勉強することもなく受けたテストは散々だったけど、それでも生きていく上で、もっと価値のあるものを知った気がしたから。


なんて、死にたがりなあたしの台詞ではないのかもしれないが。