道明さんは少し言葉を選ぶような顔をしたけれど、でもストレートに聞いてきた。



「アイツ、たまにおかしくなる時ない?」


「………」


「情緒不安定っつーか、パニクってわけわかんなくなったり。」


思い当たる節がないわけではない。


あの男を刺した時だって、タカの目はちょっと異常だった。



「身に覚え、あるだろ?」


頷くことしか出来ない。


道明さんは立ち尽くしたままのあたしの前に立ち、



「タカ、昔からそういうことたまにあったんだけど。」


それはタカの過去という意味だろうか。


あたしはそんなこと、他の人の口から聞いても良いのだろうか。


少しの迷いの中で、でも耳を塞ぐことすら出来ない。



「施設いた時もそうだったみてぇだけど、アイが殺された時なんか喋れなくなったりしたしさ。」


施設?


聞き慣れない単語に驚きながら、それでも言われている言葉の意味を必死で理解しようと努めていたのに、



「タカ、今でもたまに、あの頃と同じような目をすることがあるから。
俺も兄貴同然だし、アイツが心配なんだよね。」


「………」


「だからリサちゃん。
タカに本気なら、傍にいて、アイツの全部受け止めてやってよ。」


もう、半端には一緒にいられないということはわかってた。


けど、でも、あたしには、誰かの何かが支えられるわけなんてないよ。