あたし達は憎しみ合っているし、もっと言えば、互いを殺してやりたいとさえ思っていたはずだ。


なのにアイツはこんなものを買って、まさか、あたしにしたことに罪悪感を感じているとでも言いたいのだろうか。


途端に苛立ってくる。



「ふざけんな!」


呟いて、唇を噛み締めた。


こんなことで許してやるほどあたし達の溝は浅くはないし、第一アイツの所為で壊れたものは、もう元には戻らないのだから。


本当に、ふざけるのも大概にしてほしい。


あの事件以来、どれほど春樹の所為で苦しめられてきただろう。


“人殺しの姉”として生きてきたあたしの気持ちが、こんな程度の傷薬なんかで治るとでも思っているのだろうか。


むしるように袋を掴み上げ、それごとゴミ箱に投げ捨てた。


春樹が何を思ってこんなものを置いていったのかは知らないけれど、でも考える必要もない。


拳を握り締めると、消えかけていた痛みを思い出した。


だから苛立ち紛れに真新しい灰皿をフローリングに叩き付けると、ガコッ、と鈍い音がする。


床板には窪みが出来た。


肩で息をしながらそれを見つめていると、次第に虚しさと悲しさ、やるせなさに襲われる。



「…何で、なのよっ…」


許すことの方がずっと簡単だということくらい、頭ではわかってる。


けど、でも、あたしと春樹が今更どんな関係になれるというのだろう。


もう、昔みたいに戻れるわけなんてないんだから。


だからあたし達は、憎しみ合う以外に道はないの。


ねぇ、そうでしょ、春樹。