自宅に戻ってテレビをつけると、画面は砂嵐になっていた。


実は宇宙人と交信をするための電波が出ているのだと、昔、誰かが言っていたような気がするけれど。


思い出したそんな迷信に肩をすくめ、取り出した煙草に火をつけた。



「…タカ、か。」


残ったのは、手首の痛みだけ。


そもそも本名じゃないんだろうし、きっと住む世界すら違うだろう。


だからもう二度と会うこともないのだろうけど、でも、あの瞳だけが鮮明だった。


タカになら殺されても良いと、あの瞬間、あたしは本気で思っていたんだ。



「なんて、馬鹿みたい。」


けれど、言葉にして思考を振り払う。


そもそも真横で人が倒れようとも興味の欠片すらないあたしが、誰かにそんな感情を抱くこと自体、おかしな話だ。


誰もいないリビングには、あたしが吐き出すため息混じりの煙だけが漂い、一層虚しさを増長させていた。


何故、タカはあたしを殺してくれなかったのだろう。


外からは微かに雨音が聞こえ始め、それに耳を傾けるようにテーブルへと突っ伏した。





死にたかった。

でも死ねなかった。



今日はアイツがいない日だ。