一年のうちで、今日という日がなくなれば、どんなに良かったろうかと願わずにはいられない。


過去も、何もかも、全てを消せたなら、あたし達家族はきっと、もっと違う関係を築けていたはずだから。


なんて、時間は巻き戻せないのにね。





だからあたしは、
一生春樹を憎み続けるの。








用事があるから後で行く、とタカにメールを送り、自宅に戻った。


いつも通り、振り込まれていた現金を折半した片割れの封筒をテーブルに投げ置き、リビングで煙草を吹かしていると、少しして、玄関のドアが開く音がする。


実に一ヶ月ぶりの、弟との再会。



「30分もオーバーだけど。」


嫌味のように言ってやると、春樹はあたしに向けて舌打ちを吐き捨てた。


そしてテーブルに置いていたものを持ち上げ、いつものように中身の数を数え始める。


毎回増えていく彼の耳のピアスの穴は、前よりずっと拡張されていた。


春樹は学生でもなければ、何か仕事をしているわけでもない。


だから余計に憎々しくなる。



「今日が何の日か、覚えてるでしょ?」


あたしが口を開いた瞬間、彼はぎろりとこちらを睨み付けた。


それは異様なまでに歪んだ瞳。



「アンタの所為で死んだ木下くんの命日だ、ってこと、忘れてないよね?」