タカは悔しげに吐き出した。



「この世の中には、死んだ方がマシだって思うようなヤツならいくらでもいるだろ!」


タカの言うことは、確かに正論だ。


それでも、誰かが死ねば他の誰かが悲しむことになるんだよ?


言い掛けたけど、でも言葉には出来なかった。


だって彼があまりにも復讐を誓った人のような目をしていたから。



「ねぇ、タカは何を抱えているの?」


ナイフを常備しているのは、本当に護身用というだけの理由だろうか。


けれど、あたしの問いに答えは聞かれなかった。



「俺、やっぱ異常なのかな。」


代わりに漏れたのは、そんな台詞。


泣き出しそうな瞳を持ち上げた彼にあたしは、



「違う、タカは優しい人だよ。」


「………」


「だからそんな風に言わないで。」


好きとか愛してるとか、そういう難しいことはわからない。


それでも今、この瞬間、タカの傍にいたいと思った。



「助けてくれてありがとう、タカ。」


タカだけが、あたしをちゃんと見てくれてるし、想ってくれてる。


例え歪んでいたとしても、それは真実。


真っ赤に染まった互いの手を絡めると、彼はそこに口付けを添えてくれる。


まるで悪魔の儀式のような、血の洗礼。