タカは部屋に備え付けの冷蔵庫から缶ビールを取り出し、ピンクライトさえなければまるで、自宅でくつろいでいるかのよう。


見た目だけなら小洒落たニーチャン風の彼の横顔は、先ほどの剣幕とはまるで違っていて、やっぱり少し戸惑ってしまう。


タカは一体何を考えているのか。



「ねぇ、タカ。」


「ん?」


言い掛けた時、再び彼のポケットから着信音が鳴り響いた。


ディスプレイを確認し、タカは舌打ち混じりに通話ボタンを押す。



「はい、はい、わかりました。
大丈夫です、今から戻ります。」


携帯を置いたタカは、途端に不機嫌そうになった。



「立てよ、リサ。」


「…えっ…」


「俺、戻らなきゃならねぇ用が出来たから、ついでに送ってやるよ。」


もしかしたらこのまま逃げられないかも、とすら思っていたのに、その言葉には拍子抜けだった。


だから信じられなくて、目をぱちくりとさせていると、



「置いてかれたくねぇなら、さっさとしろって。」


少し迷ったが、でも急いであたしはその背を追った。


もう、刃物を向けられ脅されるようなことはなくて、それでもただ、彼の優しさを感じた気がしたから。


タカに対して抱く感情の名前がわからない。