「おまえ、色気ねぇなぁ」
アタシは思わず、ズッコケた。
「なんだとっ!!失礼な!!」
真面目な顔をして言うから、何事かと思った。
一瞬、何を言われるかと、ドキッとしてしまった瞬間を返してほしい。
「いや、お前のそーいう、色気ねぇトコとか、好きだったなぁと思ってさ」
「アタシはあんたのそーいうトコ嫌だったわぁ」
そうして、二人で笑い合う。
3年前、こうしているのが心地好いと感じていた。
今もそうだ。
この、気を張らないで、自然体で居られる空間が、堪らなく心地好い。
もう終わったハズの恋。
終わった、はずの。
「なぁ、俺達、もう一回付き合わない?」
ビールの片手間でそんな事を言われて、むせた。
「はぃ?」
「付き合おうよ、お互いにフリーだし」
「そんな簡単に」
戸惑いと、不安、期待が胸に溢れる。
簡単に、気持ちが揺れる。
「知らない仲じゃないんだし、簡単で良いんじゃない?」
「そーぉー?」
乾いた笑いが出てしまう。
「まぁ、考えとくわ」
アタシの言葉に、彼はニコリとした。
ビールジョッキが空になる頃には、揺れていた私の気持ちはすっかり彼に傾いていた。
END