俺が今一番見たくない奴が現れた


「送って…行こうと思ったんだけど、日高がいたのか!」


矢野は俺の顔を見て軽く微笑んだ後


「じゃ、心配ないか!」

と、今度は空澄に微笑みかけた


「うん、大丈夫だよ。」
「じゃあなっ!」

「ばいばい!」


矢野はすぐに帰っていったのに空澄はずいぶん長い間、矢野の背中を見つめてたように感じた…

いつも空澄が家には入るのを見届ける俺の様に


「ももちゃんって優しいよねぇ!!」


唐突に空澄がそう言った


『なんだよ、急に。』

「だって待っててくれたもん!寝てたけど(笑)」
『寝てたはよけいだろ(笑)』


矢野との下校を阻止できて、喜んでいる俺は空澄が思ってるような優しい人間じゃないよ…


『…だったらさ、』


お前が思ってるよりも、ずっとずっと


『今度から“待ってなくていいよ”なんて言うなよ。』


意地悪だよ?俺は


「でも…」


『どうせ待ってるんだからさ(笑)』


二人きりになんてさせてやらない!


「うん、わかった!ごめんね?ありがと!」


屈託のない笑顔を浮かべる空澄に


『どーいたしまして(笑)』


俺の精一杯の悪足掻き