そして、星来の手をギュッと握って一言。
「そんなに怒鳴ると可愛い顔が台無しだよ」
「っ!あたしにじゃなくて、お兄ちゃんに言ってくださいっ!」
星来がパッと手を離すと、先輩は驚いたような顔をしながら俺を見て……
「そんなに怒鳴ると「ちっがーうっ!」
俺の手を握りながら星来に言ったことと同じことを言おうとした。
まあ、これは先輩の悪ふざけ。
先輩は天然とかの類じゃないから、全部わかっててやってる。
それがわかる俺は、苦笑いでその場をしのぐ。
星来はわかってんのかわかってねえのか……
いつも先輩の悪ふざけに乗ってる。
「て、てか!先輩、お兄ちゃんと一緒にいたなら喧嘩止めてくださいよっ」
「やだ」
「やだ、って……」
「蒼空も止めてほしくないだろうし。何より、めんどくさい」
先輩の言いぐさに星来は少しだけムスッとした表情になる。
そして
「お兄ちゃん、帰ろっ!」
「は?あ、先輩またなー」
パッと俺の腕を引っ張り、歩き出す。
俺が引きずられながら先輩に声をかけると、先輩は軽く手をあげていつもの曲がり角を曲がっていった。

