見えない糸


「小谷先生、いつこの手紙が入ってたんです?」

グシャグシャに握り潰したかったが、何とか堪えて、手紙を小谷に戻した。

「2週間くらい前でしょうか...差出人も書かれてなかったので、気味悪くてすぐには開けなかったんです。開けたのは翌日でした」

「そうでしたか...」

直次はイライラした気持ちを抑えるため、タバコを出した。

「あ、失礼...小谷先生はタバコ嫌いでしたよね」

「ええ、すみません」

直次はキッチンに移動した。

このイラつきはタバコの助けがなければ治まらない。

火を点け煙を吸い込むが、あっという間に1本吸い終わり、また新しいタバコを出して火を点けた。

怒りで手が震える。
まるで、アルコール中毒の禁断症状のようだ。

「先生の所にも同じ手紙が届いたんですか?」

だいぶ温くなってしまったお茶を一口飲んで、小谷が訊ねてきた。

「ええ...」

「それを...紗織ちゃんは読んだんでしょうか?」

「ええ...私と連名だったので最初に彼女が読んでしまったんです」

「なんてこと...」

小谷は口元に手をあて絶句した。