直次が、戴いたお菓子とお茶の用意をしていると
「あの、紗織ちゃんは?」
小谷が訊いた。
「紗織は出掛けてます。友達と遊んでくると言ってました。夕方前には帰ってきますよ」
そう言って、お茶を出した。
「紗織ちゃんは就職とかは?」
「いえ、してません。本人の希望で大学にも進学してません。私の世話をしてくれて、とても助かってます」
早速いただきます、そう言いながら、お菓子に手を延ばした。
「先生、紗織ちゃん、何か変化はありましたか?」
「何かとは?小谷先生、何か御存知なんですか?」
どうも気になる。
しばらく連絡無かった間に、紗織の事で思い出した何かがあったのか?
「実は...先生に話そうか迷ったんですが...」
小谷は持ってきたバッグの中から、封筒を取り出した。
「私の自宅のポストに、こんな手紙が入っていたんです」
そう言って直次の前に差し出した。
「拝見します」
自身の胸がざわめいているのを、気付かずにはいられなかった。
中には1枚の紙と、見覚えのある一文。
それを目にしたのと同時に、怒りが底から込み上げた。
【 紗織の過去を知っている 】
家に届いたのと同じものだった。


