「今日はたのしかったね!」

無神経にも磨郷がそんなことを口走る。
お前、俺といる時より楽しげにしてたな。
怖くてそんな事まともに言えないけど。

「そうだな」

軽めに返すと磨郷は上機嫌に続けた。

「ホント、裕太には感謝だね」

……裕太?
あぁ、篠田の名前か。
磨郷が俺以外を始めて下の名前で呼ぶ。
違和感が気持ち悪い。
同時に嫉妬している自分自身がうざったい。


「そうだな」

こんなに冷たくしてるのに磨郷は全く気づかず浮かれている。
ホントに嫌だ。
これ以上一緒にいると磨郷を傷つけてしまうかもしれない。

「わり、急ぐから。じゃ」

そう素っ気なく言うと磨郷は「あ、うん! またねー」っとまたまた上機嫌に返してきた。





そして俺は振り返ることなく道をひたすら走る。
夕日が沈んだ暗く寂しいこの道を……。