初恋は前途多難! ~朗らか社会人とメイド女子高生 【1:出会い編】

 色んな話をしながら、マコといつもの場所で別れ、独りでアパートに向かう。

 今日もバイトがあるから、ご飯を食べたらすぐに出かけなきゃいけない。

 あと、今日はバイトの帰りに銭湯に行こうと思うから、いつも持って行くカバンの中に銭湯に必要なものも詰める。

 このアパートにはお風呂がないから、こうしてバイトの帰りに銭湯へ寄るのもすっかりと習慣になった。

 本当は毎日お風呂に入ることが出来ればいいけれど、そういうわけにもいかない。

 お風呂が無理な日は、台所の流しで頭を洗うことだってする。

 給湯器なんていう便利なものがないから、隣のコンロでお湯を少し沸かし、それをお水でいい温度にしてから洗面器に移しかえて髪を洗う。

 同じような要領で体を拭うこともする。

 夏場は楽だけど、冬は寒いから辛い。

 春に変わった今は、随分と楽になった。

 贅沢は出来ないけれど、お風呂に入る日はやっぱりちょっと嬉しくて、仕事で疲れていても足取りは軽い。

「準備完了っ!」

 必要なものを用意し終えると、バイトに向かうために急いで昼食の準備を始める。

「……」

 ちらり、と、テーブルの上に置いていた二つ折りのメモ片が目に入ったけれど――そのときのあたしは、そのメモから視線を逸らし、心で逃げた。