初恋は前途多難！ ～朗らか社会人とメイド女子高生 【１：出会い編】

　……あたしは、それを知りたいの？

　もしそうだとしたら、どうして？

　きっと――シンさんのことだから、なんだと思う。

　知ってみたいのかもしれない――シンさんのこと。

　興味本位、って言われればそうかも知れない――ううん、それ以外の何物でもない。

　もちろん、シンさんはお店のお客さんだし、お店のルールでプライベートなことに関しては、教えてもらうのも教えるのもダメ。

　それはよく分かっている。

　けど――……

　それさえ頭の片隅で霞んでしまいそうになるくらい、あたしはシンさんのことを１つでも知りたいという想いが生まれていたのかもしれない。

　もちろん、そう思っていても自分からアクションを起こすなんて、考えてもいなかったけれど。

「あたし……あんなこと言ったけど、その人の本当のことなんて、何も知らないの。だって、向こうはお客さんなんだから……」

　言った瞬間、どうしてだか分からないけれど、すごく寂しさを感じる。

　でも、当然よね――だって、シンさんはお客さんだし、あたしはメイドとしてわずかな時間に癒しを提供するだけなんだから。

「じゃあ、知ればいいじゃない」

　さも当然、というようにすぐに返ってきたマコの言葉に、あたしは思わず顔を上げて彼女を見つめた。