生活費のほかに、高校の授業料も稼がなきゃいけないけれど、高校生のあたしが出来る仕事なんて、本当に限られている。

 通っている公立高校の先生たちが、色々と助成や補助の申請をしてくれたけれど……それでも完全にタダ、というわけじゃない。

 授業料込みで年間10万程度――そのお金も稼がなきゃ、ダメ。

 考えた末にあたしがバイトした先は――……

「お帰りなさいませ、ご主人様」

 電車で2駅向こうの駅前にある「Strawberry House」という名のお店……俗に言う、メイドカフェ。

 時給もよかったけれど、高校と両立する上で1番都合の良いシフトが組めたから、っていう理由も。

 真面目に働けば時給も上がるし、なにより――

 メイド、っていうちょっと非現実的な職業を疑似体験することができたり、かわいいメイド服を着られる、っていう魅力に惹かれたのもある……かな?

 膝上ミニ丈のふわりとした黒いメイド服と白いニーソックスに、少し厚底の黒いストラップヒールパンプスの、メイドとしての「制服」に身を包み、さらに髪の長いあたしは、ふんわりとした三つ編みを赤いヘアゴムで左右で結んで肩から前に流している。

 店内はほんのりピンク色で、窓にはレースのカーテンがかかっていたり、天井には小さいけれどシャンデリアがついていたりする。

 店名に「Strawberry」ってついているだけあって、イチゴをワンポイントとして色んなところに上品な模様として描かれていたり。

 テーブルもレトロな丸テーブルで統一されているし、店内に1歩入れば、きっとちょっとしたお屋敷のように錯覚できるはず。

 あたしも、ちょっと「どこかのお屋敷で働いている」気分をなんとなくいつも感じて仕事をしていた。