「……」

 ふー……と大きな息を吐いて、ようやく気持ちを落ち着ける。

 そしてまた、番号に目をやった。

 ――確か、夜なら繋がるって言ってたよね……

 意識がカバンの中の携帯に向かう。

 近くに置いてある時計を確認する。

 時刻は夜の9時を少し過ぎたところ。

 ……少し遅いけど、大丈夫だと思う。

「……」

 カバンの中から、携帯を探す。

 パールピンクの2つ折りの携帯。

 それを開くと、親指がボタンにそっと乗る。

「っ」

 ボタンに指をかけた瞬間、はっとなったあたしは、慌てて携帯を閉じて滑り落ちるように横へと置く。

 あたし……今、番号を押そうとしてた……?

 しかも無意識だなんて――……どうして……

 そのとき、あたしは自分が仕様としていた行動が一瞬理解できなくて――しばらく、横に落ちた携帯を眺めながら、呆然としていた。