「……」

 晩御飯も食べず、考えた。

 目の前のテーブルの上にはあのメモ紙片。

 何度もその番号を目でなぞる。

 番号の並びを覚えてしまいそうなくらい、食い入るように見つめていた。

 シンさんの、携帯番号――

 ここに電話をすれば、シンさんに繋がる。

 あの声が、あたしの耳もとで……聞こえてくるはず。

 しかも……あたしだけに。

 この間のように向かい合って……じゃないけれど。

 でも、あたしと話をする――あたしだけに話をしてくれる。

 優しくて穏やかな、低く響くようでいて、甘くて明るい印象を受けるあの心地よい声。

 あの声が、携帯からあたしに向けて聞こえてくる――

 そう思っただけで、胸の鼓動が早鐘を打つ。

「……」

 慌てて必死に何度も深呼吸して、なんとか早鐘を落ち着けようと努力するけど。

 落ち着くまでには、たっぷり10分以上かかってしまった。