初恋は前途多難! ~朗らか社会人とメイド女子高生 【1:出会い編】

「――」

 ふ、とシンさんの表情が優しくなる。

 この間の「優しい笑顔」に近いそれを、ふわりとあたしに向けてくれていた。

 思わずこっそりと左右を見たけど、お店にいるメイドはあたしと茜さんだけで、茜さんは用事でキッチンの奥に入っている。

 っていうことは――あの笑顔を、あたしに……

「……」

 そう思うとなんだか急に恥ずかしくなったけど、何とか笑顔を作って軽く会釈し、そのまま逃げるようにして控えのカウンターの下に潜り、物を探すふりをして心を落ち着かせようとした。

「ふー……」

 あー……まだ胸の鼓動が早い……

 どうしよう、顔も熱い……早く何とかしなきゃ。

 落ち着こうと思えば思うほど、さっきの笑顔が脳裏を過ぎって仕方ない。

 そして思い返しただけでも顔が真っ赤になる……

 でも――あの笑顔は嫌いじゃない……

 そんなことを思いながらも、早く収まるように何度か深呼吸を繰り返していると、

「どうかしたの? さくらちゃん」

 戻ってきた茜さんが心配そうに声をかけてきてくれた。