初恋は前途多難! ~朗らか社会人とメイド女子高生 【1:出会い編】

 いつものメニューをオーダーしてくれたシンさん。

 結局、あたしの休憩はなくなったけれど。

 でもシンさんの様子をこっそり見られたから、それで充分。

 茜さんには心配されたけど、笑って「大丈夫です」って答えた。

 代わりに店長に掛け合ってくれて、1時間分多く時給をつけてもらえることに。

 あたしにしてみれば、逆にそっちの方がありがたかった。

 仕事をしながらだから、そんなにまじまじは見ないけれど。

 それでも、一段落する瞬間にはちらりと見てしまう。

 すると、決まってあたしの視線はシンさんとぶつかる……

 ――はずだけど、今日のシンさんは少し違っていた。

「……」

 注文してくれたメニューを食べ終わり、コーヒーを口に運びながら、書類らしき紙に目を通している。

 お仕事の書類……かな?

 テーブルの上には薄いモスグリーンの封筒に、数枚の書類らしき紙。

 時々、書類を見ながら向かいの真治さんに話をしている。

「……」

 その真剣な表情に、あたしは仕事の手を止めて思わず見入ってしまっていた。