「さっき、少し予定が狂ったからね、ここに来られないかと思ったんだ」
何事もないように落ち着き払った様子で席に着いたシンさんは、にっこりといつものようにあたしを見上げて微笑み、そう言ってくれる。
「お疲れ様です。――そして、ありがとうございます」
にっこり笑って頭を下げた。
意識しちゃいけない、って思えば思うほど――あたしの顔が赤くなりそうになって、慌てて頭を下げて顔を隠す。
「すぐにおしぼりをお持ちいたしますね」
「うん」
恥ずかしさからか、逃げるようにして慌ててカウンターへ入る。
「さくらちゃん、接客交代するよ?」
あたしの休憩時間を心配して、別のメイドの子が声をかけてくれたけど、
「ううん、大丈夫。あのお客さん、あたしじゃないとダメなの」
笑って首を振ると、交代の申し出をやんわりと断った。
……別に、あたしじゃないとダメ――なんてはずはない。
きっと、あたしの小さな独占欲なんだと思う。
他の子にシンさんを接客してほしくない……かも。
――特別に感じるその感情の名前を、無意識に閉じ込めながら。
きっと、その頃のあたしは「メイドカフェという少し特殊な仕事だから」っていう建前で、その感情に気付かないふりをしていたんだと思う。
何事もないように落ち着き払った様子で席に着いたシンさんは、にっこりといつものようにあたしを見上げて微笑み、そう言ってくれる。
「お疲れ様です。――そして、ありがとうございます」
にっこり笑って頭を下げた。
意識しちゃいけない、って思えば思うほど――あたしの顔が赤くなりそうになって、慌てて頭を下げて顔を隠す。
「すぐにおしぼりをお持ちいたしますね」
「うん」
恥ずかしさからか、逃げるようにして慌ててカウンターへ入る。
「さくらちゃん、接客交代するよ?」
あたしの休憩時間を心配して、別のメイドの子が声をかけてくれたけど、
「ううん、大丈夫。あのお客さん、あたしじゃないとダメなの」
笑って首を振ると、交代の申し出をやんわりと断った。
……別に、あたしじゃないとダメ――なんてはずはない。
きっと、あたしの小さな独占欲なんだと思う。
他の子にシンさんを接客してほしくない……かも。
――特別に感じるその感情の名前を、無意識に閉じ込めながら。
きっと、その頃のあたしは「メイドカフェという少し特殊な仕事だから」っていう建前で、その感情に気付かないふりをしていたんだと思う。

