初恋は前途多難! ~朗らか社会人とメイド女子高生 【1:出会い編】

「ただいま、さくらちゃん」

 あたしの前には、にっこりと笑うシンさん。

 その少し後ろには、いつものように真治さんの姿。

「お帰りなさいませ、ご主人様」

 もう1度そう言って頭を下げると、

「お席へご案内いたします」

 いつものように手で奥を示して席まで案内。

「こちらのお席へどうぞ」

「ありがとう」

 最近、あたしはシンさんたちを特定の席に案内するようになった。

 そこは、ちょうどカウンターから1番見える位置にある席。

 もちろんそこに先客がいる場合は違う席だけど、その席が空いていたら必ず案内している。

 理由は――……秘密。

「――今日も会えて、嬉しいよ」

 着席する間際、小さな声で分からないようにシンさんがそう呟く。

「え――……」

 一瞬意味が理解できず、あたしはきょとんとした表情で固まったまま、シンさんをじっと見つめた。