色んなことを思いながらも、なんとか隣町の住んでいたアパートまで戻ったあたし。

 隣に住んでいる大家さんに事情を説明したら、あたしにすごく同情してくれて、今まで暮らしていた部屋はかなりの格安で引き続きあたし独りで住まわせてくれることになった。

 6畳1間、お風呂の無い小さな木造アパートの2階の端の角部屋……築年数もそれなりで、お世辞にも綺麗とは言いがたいし、3人家族が住むには小さな部屋だったかもしれないけれど。

 独りだったら――すごく広く感じる。

 ……なんて、感傷に浸る間なんかあたしには許されてない。

「……生きなきゃ……」

 静かな部屋の中央で座り込み、空気を吐き出すように無意識に呟く。

 勝手にお金が沸いてくることはないんだから、お金を稼ぐ手段を考える。

 1人で生きて、祖父を見返してやろう、と。

 そのときのあたしには、強い決意が生まれていた。

 あとから思えば、その「気持ち」があったからこそ、今のあたしがあると思う。

 あんな人間に屈するくらいなら、自分で精一杯生きてやる、って。

 ほんの少し持っていた「負けず嫌い」という思い。

 これが功を奏した――のかな?

 うん、そうよね。

 この気持ちがあったから、あたしは今までいられた――と、思う。