――今思い返してみれば。

 シンさんを充分に特別視してたと思う。

 きっかけは、本当に小さなこと。

 メイドカフェに来るお客さんの層とちょっと違っていたことから、あたしが気になったところから始まる。

 それに――朗らかで、温かくて、真っ直ぐで。

 謝りたいからっていう理由で、ルール違反をしてまであたしを待ってくれていて。

 違反は違反だけど――でも、その気持ちがなんだか嬉しかった。

 だから「偶然」ってことで、あたしはシンさんとちょっとした「秘密」を共有した気分になって。

 それにシンさんも乗ってくれた。

 きっと、シンさんだったからこんな風に出来たんだと思う。

 ――なんて、後付けならなんとでも言えるのかな?

 でも……そう思いたい。

 シンさんだったから、あたしは頑張ることが出来た。

 このあとのどんなに辛いことだって――

 温かくて朗らかで優しいあの笑顔があったから。

 ……なんて、これも今だからそう思えるのかも。