シンさんがコーヒーを注文した意味は、なんとなく察することが出来る。

 さっき、缶コーヒーをシンさんに渡したから。

 あの缶コーヒー、ちゃんと飲んでくれたんだと思う。

 そしてまたあたしからコーヒーを受け取りたくて、注文を付け加えてくれた。

 ――きっと、そうだと思う……思いたい。

 どうしてかは分からないけれど、飲んでくれたって確信する。

 そんな目をしていたように見えたからかな?

 いつものように温かくて朗らかな笑顔だけど、その目は、さっき出会ったときに感じた「優しさ」が含まれている気がする。

 優しく包み込んでくれるような……温かい、シンさんの心。

 それをあの目に見た気がしたから――だと、思う。

「はい、かしこまりました」

 あたしは小さく頷き、シンさんの顔を見てにっこり微笑む。

 時間にしてみれば1秒にも満たないものだけど、あたしはシンさんと目を合わせて声に出来ない言葉を思う。

 とびきりのコーヒーを作ってあげたい――って。

 控えのカウンターに戻った途端、こっそり顔を真っ赤にさせたのは内緒。

 どきどきする胸を少し落ち着かせ、気持ちを切り替えようと自分に言い聞かせつつ、あたしはキッチンにオムライスをお願いし、コーヒーの準備をする。

 どうしてこんなに気持ちがどきどきするんだろう……

 ――シンさんに対する気持ちを、まだこのときはちゃんとと自覚が出来ないままだったけど……今思うと、うっすらと感じつつあったのかもしれない。

 だから、あんなにシンさんとの出来事を記憶の中でリピートしたのかな? って。

 そんな風に自分の気持ちがゆっくりと変わっていくのを、自分自身で気がつかないまま、あたしはコーヒーを作りながら、ずっと無意識の中でシンさんの笑顔を思い浮かべていた。

 そして、シンさんがあたしを見つめてくれるあの目に込めていたまた違う別の意味を知ったのは――ほんの少しだけ先の話になる。