初恋は前途多難! ~朗らか社会人とメイド女子高生 【1:出会い編】

 気を抜くと考えるのは、シンさんのこと。

 しかも、さっきの出来事をずっとリピート。

 どきんとした微笑みに、男らしい指の感触、それに――あの優しい様子。

 仕事をおろそかにしていたわけじゃないけど、それでも、合間には無意識でシンさんのことを考えていたように思う。

「さくらちゃん」

「はい、ご主人様」

 呼ばれて、慌てて意識を仕事に向ける。

 いけない、いけない――仕事に集中しなきゃ。

「お呼びですか? ご主人様」

 あたしを呼んだのは、今日も来てくれた常連の大山さん。

「――ごきげんですね。なにかいいことがあったんですか?」

 あたしの顔をじっと見ると、大山さんは眼鏡を押し上げてそう言う。

「え? やだぁ、そんなことないですよ、いつもどおりですから」

 そんなに顔や態度に出てたのかな?

 さっきの出来事があたしにとって「いいこと」だった……ってことよね。

「ふぅん――まぁいいです。……おまかせパフェ、ひとつ」

「はい」

 にこやかに頷いたあたしは気がつかなかったけど、大山さんの顔は憮然としていて、しばらく思案顔だった――らしい。