初恋は前途多難! ~朗らか社会人とメイド女子高生 【1:出会い編】

「さくらちゃんはすごく優しいね」

 ルール違反を犯したぼくに、こんなに優しく接してくれているんだから、って。

 シンさんはそう言って「ぼくはダメな大人だなぁ」と呟いて恥ずかしそうに笑う。

「シンさんもすごく優しい人だと思います。じゃなきゃ、あんなに温かい笑顔なんて出来ないと思いますし」

 あの笑顔は本物だって確信できる。

 でないと、あんなに気にならないと思う。

 その……あの笑顔が、いい……と思うし。

 これって、その……

「ありがとう」

 そしてシンさんがあたしをまたじっと見つめる。

 優しい目で。

「……ぼくも好きだよ」

「えっ――?」

 心の奥底の気持ちに返事をされたようで、びくん、と驚いて小さく震える。

「ぼくも、さくらちゃんの元気な笑顔、大好きなんだ」

 あ――笑顔か……

 よかった……って思う自分と、ちょっと残念……って思う自分が同居していて、どうしてそう思った「理由」に気がついたのは、もう少し後だった。