初恋は前途多難! ~朗らか社会人とメイド女子高生 【1:出会い編】

「――ごめんね」

 次に聞こえた静かなシンさんの言葉に、しばらく理解が出来なくて、何とか頭の中で今の言葉をリピートする始末。

「え……?」

 思わず、顔を上げてシンさんを見上げると、

「昨日言いたかったこと」

 いつもの満面の笑顔とは違い、少し物静かな印象を受けるその笑顔。

 初めて見たシンさんの「大人っぽい顔」に――心がどきんと鳴る。

「レジできみを困らせたから、それをどうしても謝りたかったんだ」

 だからごめんね? って、シンさんはもう1度あたしに謝った。

「メイドさんのプライベートな事は聞いちゃダメだ、ってちゃんとお約束事に書いていたのにね……ぼくが悪かったんだ」

 あたしを困らせたから――って、言ってくれたシンさん。

 ルール違反をしてまで、あたしに謝りたかったなんて――……

「でも、ぼくが待ってたから……またさらに困らせたよね。本当にごめん」

 悪循環だったね、って呟くシンさん。

 いつもの笑顔じゃないその様子を見て、あたしの心はつん、とする。

「あのっ……」

 そんなシンさんに、あたしは考えもなしに思わず言葉を出してしまった。