初恋は前途多難! ~朗らか社会人とメイド女子高生 【1:出会い編】

 今日はタクミもバイトのはず。

 だけど時間が違うのかな? いつもあたしを待っている壁にタクミの姿はない。

 一瞬考えたけど、携帯を取り出してメールを打つことにした。

『今、バイトが終わってお店を出たところ。駅に向かうね』

 タクミのお店のほうが駅に近いから、終わる時間が近いなら同じ電車になるかも。

 3月の終わりのほのかな暖かさを感じながらも、まだほんのりとやってくる寒さに、パステルピンクでトレンチタイプのスプリングコートの襟を少し寄せ、日が沈もうとしている街の裏路地を歩きかける。

 メールを送信し、携帯を閉じてトートバッグの中にしまって駅へ向かう道を急ぎかけたそのとき、

「――あ、ひょっとしてきみは……さくらちゃん?」

 不意に後から声がかかる。

「え?」

 その声に覚えがあったあたし。

 低く響くようでいて、甘くて明るい印象のその声。

 まさか……?

「――……」

 思わず振り返ると、そこにはあたしの予想通りの人物が立っていた。

 シンさん――……が。