初恋は前途多難! ~朗らか社会人とメイド女子高生 【1:出会い編】

「お疲れ様でした。さくら、失礼いたします」

 今日のあたしは朝から夕方までのシフト。

 シンさんたちを見送った後に時計を見ると、もう時間が過ぎていた。

 ルールになっている挨拶を済ませてから、事務所でタイムカードを押し、ロッカールームに入って三つ編みを解いて後ろに1つに括り直すと、着ていたメイド服を脱ぐ。

 着替えるとき、白い袖が少し汚れているのが見えた。

 ……そういえば、このメイド服もそろそろ洗濯しなきゃ。

 メイド服はお店からの支給だけど、洗濯は自分たちでこまめにしなきゃいけない。

 シフトに入る日数が少ない子は1着しか支給してもらえないけど、あたしみたいに多くシフトに入る子は、特別にメイド服を2着もらえる。

 1着を洗濯しても、もう1着でバイトに出られるように、っていう配慮。

 洗濯するメイド服をビニールの袋の中にたたんで入れ、持ってきていたトートバッグの中にそれを入れた。

 しっかりした帆布で作られている赤いトートバッグは、安物だけどしっかりしていて、バイトやお出かけのときはもちろん、お買い物のときにはお買い物袋にもなる便利なバッグとして重宝している。

 生活するためのお金が必要な今、こういった安くてしっかりしたものが1番嬉しい。

「――よし、っと」

 ぽん、とファスナーを閉じたトートバッグを軽く叩き、ふ、と1つ深呼吸をしてからロッカールームを出ると、事務所にいる店長に挨拶をしてお店を出た。