これが大人のエスコートなんだ、って。

 背中にあるシンさんの手の感触を感じながら、そんなことを思っていた。

 そりゃあ……今まで、シンさんみたいな大人と2人でどこかに出かけるなんて機会はなかったから、当然と言えば当然だけど。

 こんな風に男の人に扱ってもらえることが今までの人生の中でなかったから、凄く緊張する。

 この早鐘の鼓動――シンさんにばれてないよね……?

 あたしはシンさんの動きに連れられるように隣を歩きながら、俯き加減に歩いて緊張と紅潮で変なことになっていると思う顔を隠しつつ、懸命に深呼吸をして自分を落ち着かせようと懸命だった。

「――やっぱり、車に酔っちゃった?」

 エレベーターの前で立ち止まると、隣のシンさんから心配そうな声が降ってくる。

 どうやら、俯いていたのが勘違いされちゃったみたい……

「あ、いえ、そういうわけじゃなくて――……大丈夫、です……」

「無理はしないで、正直に言って?」

「はい――……」

 まさか、シンさんのエスコートに緊張してます、だなんて……

 言えばきっとシンさんに気を遣わせてしまう――それは、嫌。

 このときのあたしは、大人になったら男の人にはこんな風にエスコートされるのが普通なんだと思ってしまっていたから、なんとかして慣れなきゃ……って、必死だったっけ。