シンさんの優しい仕草であたしは車から楽に降り立つ。

「あの……ありがとうございます」

 けれどそのまま手を乗せ続けるのがなんだか恥ずかしくて、お礼を言ったあと、服の乱れを直すふりをして、そっとその手を離す。

「じゃあ、行こうか。――こっちだよ」

 あたしの恥ずかしい気持ちが分かったのかどうか分からないけれど、シンさんはにっこり笑ってあたしを見つめ、すっと手で近くの入口を示してくれる。

「は、はい――」

 こくんと頷き、思わず両手でミニバッグを持つ。

 無機質な、いかにもというような素っ気ない地下駐車場。

 ここがあの帝宮ホテルだ、って言われても、まだなんだかぴんとこない。

「……」

 そんなことを思いながら地下駐車場をぐるりと眺めていたら、

「小さい段差に気をつけてね」

 隣からシンさんの声が聞こえて、あたしの背になにかの感触。

「……」

 そっと隣を見ると、シンさんの手があたしの背中に伸びているのが見えた。

 シンさんの手が、あたしの背中に――……っ!

 治まっていた心臓の早鐘が、また勢いよく早くなっていくのが分かった。