「ここのホテルの中に入っているお店のひとつに、さつきちゃんを連れてきてあげたかっただけなんだ。本当だよ？　それ以外の他意はないんだ」

　ホテル、という場所に変な勘繰りをしてしまっていたあたしに、シンさんは丁寧に誤解を解いてくれる。

　何度も「他意はない」と説明してくれたシンさん。

　何度も繰り返して誤解を解いてくれたため、あたしもようやく変な勘ぐりを解くことが出来た。

「でも――ぼくの配慮も足りなかったのは確かだよね、ごめん……もしよかったら、違うお店に変えよう」

　そしてあたしのためにお店まで変えてくれると言い出してくれて。

「あ、あのっ……そこまでしていただかなくても大丈夫ですから……」

　変な勘繰りをしてしまったあたしにも責任はあるし、シンさんが悪いわけじゃないから、さすがにそこまでさせるのは気が引ける。

「ん、でも――」

「変なことを勘繰ったあたしが悪いんです。ごめんなさいっ！」

　せっかくシンさんが連れて来てくれた場所なのに、気まずくはしたくない。

　携帯を取り出して連絡しようとしているシンさんに、慌てて頭を下げて謝る。

「さつきちゃんが謝る必要はないよ。元はと言えば、ぼくが配慮しなかったのが悪いんだからね」

　そしてまた「ごめんね」と、元気なく呟くシンさん。

　その顔を見て、あたしの胸はちくりと痛んだ。