「――本当はね、あの日、さつきちゃんがお店にいるのは知っていたんだ」

 全て偶然の物語――

 そう想像していたあたしの予想とは裏腹に。

 答えてくれたシンさんの口からは、予想外の言葉が次々と紡ぎだされてきた。

「ぼくがお店に入る前にね、ぼくはさつきちゃんを知っていたんだ」

「えっ――?」

「あぁ、正確には顔を見ていた、かな?」

 ウインカーを出し、ゆっくりと左折しながら、シンさんは遠くを見て思い出すような表情で言葉を出していた。

「仕事でたまたまあの駅に降り立って、お店の前を通りがかったときだったっけ……窓際の席に、まぶしいくらい可愛い笑顔で美味しそうなパフェを持ってきていたさつきちゃんの姿を見たんだ」

「あたしの……?」

「うん。……一瞬だったけど、ぼくの記憶には強く焼きついた。気がついたら、真治を無理矢理引っ張ってあのお店のドアをくぐっていたんだよ」

「そうだったんですか……」

 お店の外からあたしの姿を見たから、シンさんはお店に来てくれた――ってことは。

 それって、その……

 あたしを気になってくれたから、ってこと……なのかな……?