メイドが控えとして入るカウンターに入り、あたしはお冷とおしぼりを用意しながら、何気にちらりとあの席を見る。

 さっき案内した2人組の男性。

 どちらもかなり長身ですらりとして、オタクっていう雰囲気じゃない。

 ネクタイはしていないけれど、ジャケットを羽織っていて身なりはかなり良いし、雰囲気もここに来る客層とは少し異質な感じがする。

 あたしのことをにこにこと興味深そうに眺めていた人は、男の人にしてみればほんの少し長めだけど、長髪の部類には入らない程度の短さを保っていて、すごく綺麗な漆黒の黒髪。

 あの笑顔を見ても分かるけど、穏やかそうで、すごく朗らかな感じがする。

 父さんと同じで、あんまり怒らなさそうなタイプかな?

 今はメニューにかぶりつくようにじっくり見てる……嬉しそう。

 ちょっと子供っぽいな――なんて、子供のあたしがそんなことを思ってた。

 もう片方の人も笑顔だけど、こっちは子供っぽい人よりも短めに髪を整えていて、落ち着いていて大人っぽく感じるかな。

 子供っぽい人とは違って、すっきりとした目で優しそうに微笑んでいるんだけど、なんだかすっごく冷静そうな感じ。

 お店の雰囲気に喜んでる子供っぽい人を微笑ましい感じに見ているみたい。

 なんだろう、友達とはまた違った感じに見えるけど――こんな友達関係もあるのかな?

 そんなことをぼんやりと考えながら、あたしはトレイにお冷とおしぼりを乗せ、再び2人のいるテーブルへと戻った。

「ご注文はお決まりでしょうか?」