その日のあたしのシフトは、お昼過ぎからラストまで。

 日曜で休みだし、学校の無い日は出来るだけシフトを入れてもらってる。

 もうすぐ春休み――その期間に入ったら、毎日シフトを入れてもらうつもり。

「お疲れ様です。さくら、入ります」

 勝手口からお店に入ってロッカーでメイド服に着替えると、奥の事務所でタイムカードを押し、そこにいる店長に挨拶をしてからキッチンを抜けて店内に入っていくのがルール。

 ここで働いてる子は、みんな本名とは別の名前でお店に出ていて、あたしは「さくら」という名前。

 別名をつけるのも、このお店に働く子のルール。

「あぁ、さくらちゃん」

 お店に入ると、キッチンの近くのでパフェを作っていた人が手を止め、あたしに声をかけてくれる。

「お疲れ様です、茜さん」

 バイトだけど、ここのお店で「メイド長」の肩書きを持っている茜さん。

 あたしより少し後に入ってきたけれど、入った当初からお店の誰よりも仕事が出来る人で、年もお店の中で年長さんっていうこともあってか、店長がすぐに茜さんを「メイド長」として、昇格させた。

 まるで本物のメイドさんみたいに仕事をする茜さんは、あたしの目標。

 茜さんの前にやってきて、にっこりと頭を下げて挨拶。

「今日はラストだったかしら? 無理はしないようにね」

「はいっ!」