チリリーン――……

 お店の入口のベルが鳴った。

 慌てて豆の缶を手にしてカウンターに置き、入口に向かう。

「お帰りなさいま――……」

 そこまで言って顔を上げたら、

「やぁ。――ただいま」

 にっこりと温かく笑うシンさんと視線がぶつかった。

 今日、シンさんと真治さんがお店に来てくれるなんて、あたしの中では予想外――……

 シンさんとは明日会うし、昨日も2人揃ってお店に来てくれたから、さすがに今日は来ないのかも……って思ってただけに、この来店はすごく驚いた。

「あ――はいっ、お帰りなさいませ!」

 一瞬、シンさんの笑顔で仕事を忘れかけたけど、次の瞬間にはメイドとしてのスイッチを入れ、いつものようににっこりと笑って頭を下げる。

「お席にご案内いたします」

「うん、ありがとう」

 もちろん、案内するのはあたしが密かに見つめられるあの席。

「こちらのお席へどうぞ」

 2人を案内し終えると、お冷とおしぼりを用意するためにカウンターに戻りながら、あたしはなんだか自分の心が少し弾んでいるのが分かった。