電話のときは必死だったから感じなかったけど。

 終わった後で、自分の胸がすごく早いのに気付く。

 そして、さっきのシンさんの声を思い出す。

 機械越しだったけど、シンさんの甘い声が耳元に直接響いてきてくれた。

 夜だからかな――少しだけ落ち着いた感じだったし、それが余計に甘い声に聞こえたのかも。

「……」

 顔が熱いから、髪の毛を拭って濡れているタオルで頬を冷やして落ち着ける。

 ――勢いで言っちゃったけど。

 あたし、本当にシンさんと会う約束しちゃったんだよね?

 電話し終えたばかりだけど、なんとなく夢見心地のような気分で、実感が湧かない。

 夢じゃないよね……?

 ドキドキする胸を抱えながら、あたしは恐る恐る頬をつねる。

「――やだぁっ、痛くないっ!」

 ぎゅっとつねったはずなのに、やってくる痛みがなくって、あたしは思わず叫ぶようにして驚いたけど。

 ――それもそのはず。

 あたしの手は頬を冷やしていたタオルをつねっていたから。

 あぁ……あたし、すっごく動揺してるみたい。

 こんなことで、本当に来週の土曜日大丈夫なのかなぁ……