「あ……」

 で、出ちゃった――

 まさか、と思っていたから、あたしの頭は一瞬で真っ白。

『もしもし? あの、どちら様ですか?』

 あっ、黙ってちゃダメよね……っ!

 喋らなきゃ――

「あ、あのっ……その……しっ、志地雄シンさんの携帯……ですか?」

 言葉を詰まらせながらも、なんとかそう言えた。

『――さくらちゃん?』

 一瞬の間のあと、向こうが確認するようにそう聞いてくる。

「あの、は、はいっ……メイドカフェのさくらです――」

 思わず、正座し直して大きく頷いちゃった。

『やぁ――電話してくれてありがとう』

 すると、途端にシンさんの声が明るくなる。

「いえ、その――すぐに電話しなくて、申し訳ありませんでした」

 電話で見えないって分かっているけれど、ついつい、ぺこりと頭を下げた。

 今思えば随分とおかしいことをしているって分かるんだけど。

 そんなことさえやってしまい、そして分からないくらいにあたしは強く緊張していた。