シンさんと会えなくなって、10日。

「……」

 重い体を引きずるようにアパートの部屋へと戻ったあたし。

 今日もお店の勝手口には、あたしを待ってくれていたタクミの姿。

 一緒に帰る途中で晩御飯に誘われたけど――今日は銭湯に行くからって言って、断った。

 お風呂にも入りたかったんだけど、なんとなく、独りで居たい気分だったから。

 銭湯の前でタクミと別れ、お風呂に入ってから部屋に戻ると、テーブルの前に座って鏡を置き、洗った髪をドライヤーでいつものようにゆっくりと乾かす。

「……」

 端に置いてあるメモ片を眺めながら、呆けたように髪にドライヤーをあてる。

 ――夜なら大抵通じるよ。……いつでも電話してきて?

 メモと一緒に教えてくれたシンさんのあのセリフを頭の中で思い返す。

「――」

 ちらり、と時計を確認。

 9時26分――……

 ……今かけたら、通じるのかな?

 なんてことを、ドライヤーで髪を乾かしながら、あたしは考えるとはなしに思っていた。